厚生労働省から、2023年9月21日に開催された「第7回 社会保障審議会年金部会」の資料が公表

されました。今回の議事は、「第3号被保険者制度について」と「女性の就労の制約と指摘される制度

等について(いわゆる「年収の壁」等)」となっています。

社会保険の適用区分といわゆる「年収の壁」として、短時間労働者の社会保険制度上の適用区分は、各

自の働き方(労働時間及び収入)や扶養者の有無によって異なっており、「年収の壁」はこの適用区分に

起因します。

具体的には、第3号被保険者が第1号被保険者に移動する際にいわゆる「130万円の壁」、第2号被保険

者(短時間被保険者)に移動する際にいわゆる「106万円の壁」が生じます(資料2,5頁ご参照)。

この「年収の壁」等へ対応策として、資料では以下の考えが示されています(同資料20頁ご参照)。

●「106万円の壁」への対応策の考え方

・いわゆる「106万円の壁」では、保険料負担が増えるが厚生年金給付も増える。これは全ての厚生年金

被保険者に共通であり、適用拡大に伴う短時間労働者のみ異なる取扱いとなるわけではない。

・他方で、給付のことは考えず、「壁」を境にした保険料負担による手取り収入の減少のみに着目すれば

「壁」を感じる者が存在することから、これへの対応は「保険料負担による手取り収入の減少をどうする

か」を出発点として考えることが基本となる。なお現在の適用要件の下においては、最低賃金の引上げ等

により、適用時点で「106万円」を意識しない水準まで収入が増加していればいわゆる「年収の壁」は解

消される。

●いわゆる「130万円の壁」への対応策の考え方

・いわゆる「130万円の壁」では、保険料負担が増えても基礎年金給付は同じであり、これは第1号被保

険者と第3号被保険者とで負担と給付の構造が異なることによるものである。

・したがって、これへの対応は、第3号被保険者のあり方そのものに着目した何らかの見直しを行うか、

「壁」を感じながら働く第3号被保険者が少なくなるよう、短時間労働者への被用者保険の適用拡大を

一層加速化することが基本となる。

同省は、「106万円の壁」への対応策として、新たに保険料負担が生じるパート従業員らの手取りが

減らないように本人負担分の保険料を減免する案が示されていますが、これまでの年金部会の主な意見

ではその案について不公平感が強すぎるなどの意見もあがっています(同資料27ページご参照)。

そのため新たな意見として、「106万円の壁」問題の抜本的な解決策として週20時間未満(月8.8万円

未満)の雇用者も含めた被用者保険の適用拡大が最適ではないか。また週20時間未満の雇用者への適用

拡大の具体的な手段として「1.5号/2.5号被保険者制度」といった提案も示されています(是枝委員提出

資料ご参照)。

 詳細は下記をご参照ください。

https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/nenkin_230921.html